4月10日の日経新聞の社説です。早くこうした環境の整備を。

自転車を日本の交通体系にきちんと位置づけるための提言を、この問題に詳しい有識者の会議がまとめた。車道を走るのが原則であると改めて強調し、走りやすい空間を細切れではなくネットワークとして整備するよう求めている。
 国土交通省警察庁は、提言を踏まえて安全走行の指針をつくる方針だ。提言の趣旨を生かし、自転車にとっても、歩行者や自動車にとっても安全な交通環境づくりに本気で取り組む必要がある。
 自転車の「車道走行が原則」というルールほど形骸化している交通法規は珍しい。そもそも自転車が走れる歩道がある。加えて「車道を走るのは怖い」という人たちが、本来自転車が走ってはいけない歩道にも上がる。一方で、自転車の数も歩道の高齢者も増えた。その結果、自転車と歩行者との事故は10年間で1.5倍になった。
 この40年近く、自治体や警察は自転車の安全対策の名のもと、歩道に「自転車通行可」の標識を立てて急場をしのいできた。それがいちばん簡単だからである。
 提言はそうした発想に見直しを迫っている。歩道は歩行者に返し、自転車が走る空間はこれから専用道や自転車レーンをつくることで確保する。自転車で車道を走るのが怖いといわれたら、歩道に上げるのではなく、怖くない環境を車道につくるという考え方だ。
 また、自転車の走りやすい空間を連続して整備するよう求めている。確かに、現状では各地の自転車道、専用レーンがブツ切れで、安全な走行環境にはほど遠い。
 提言の実現には予算も必要だし交通ルールの徹底、地域の合意づくりも欠かせない。ただ、昨年10月に警察庁が自転車の総合対策をまとめてから、自転車への関心はかつてないほど高まっている。有識者が4カ月の議論でつくった提言は、ほぼ納得できる内容だ。
 将来を見すえれば、中距離を移動する手段として自転車の役割は増していくだろう。行政や警察は、自転車対策について長く無策だったツケを支払う覚悟が要る。